その要旨は、
- TEEBは、2007年3月にG8と5新興経済諸国の環境大臣会議によって創始され、①地球の生物多様性の経済便益、②生物多様性の破壊損失、③生物多様性の効率的保護の費用に対する諸保護手段の評価、などを中心とする地球規模の研究である。
- TEEBは、人間の市場経済活動が社会的費用や外部不経済と呼ばれる生態系や生物多様性を毀損する現実を重視し、それらの不可視の自然価値を測定し評価して可視化し、それらの自然価値の保護や望ましい利用のあり方を研究する。
- 地球上の生物多様性が下降している事実が次々に解明されるにつれて、生物多様性破壊の損失の社会的認識が消 費者の諸選択や購買行動の意思決定に影響を与え、金融機関や投資家は生物多様性と生態系の可能性とリスクに関心を寄せ、また企業も生物多様性破壊損失の脅威を認識し始めている。
- すべての企業活動は、直接的に、あるいは間接的に生物多様性と生態系サービス(ecosystem service)に依存しているし、また大部分の企業は、生物多様性に積極的・建設的に、あるいは消極的・否定的に影響を与えている。
- 世界の100大企業の調査によると、生物多様性と生態系を戦略課題として重視し悪影響を減少したり保護する活動を表明するする企業は18%にすぎなく、まだ関心もなくそれらの生存持続に貢献する活動をしていない企業は82%にも達している。
- 生物多様性と生態系サービスは、すべての企業に多様な事業機会を提供するものである。まさに、生物多様性と生態系サービスのマーケットは、CO2排出防止・削減権取引マーケットに並んで、今後重視すべき事業分野なのである。「生物多様性・生態系系ビジネス」(BES Business:Biodiversity&EcoSystems Business)の市場規模は、08年5.7兆円から20年には25兆円に 拡大すると予測されている。
- その内訳は、たとえば、食糧・飲料事業は3.5兆円から19兆円へ、森林植物事業は0.4兆円から1.3兆円へ、水事業は0.4兆円から0.5兆円へ、「法規制生物多様性オフセット」 (法規制による自然損失を自然保護価値の買い取りによる補填填)は0.3兆円から0.9兆円へ、それぞれ拡大すると予測されている。
BESビジネスの分野は、機械系・プラント系・先端技術系の環境ビジネスとは異なり、非機械系・非プラント系・非先端技術系で、軽工業品・ 伝統工業品・AlternativeTechnology製品の「環境ビジネス」として極めて有望であり、環境社会起業や自然環境ベンチャービジネスの環境ビジネスインキュベーションの格好の対象分野となるであろう。
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